- 空間設計
- 空間演出
安平町 早来学園 ICT空間設計
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安平町 早来学園 ICT空間設計
ICT空間設計により実現する「共創」のきっかけが生まれる学校
チームラボがICT空間設計*1を行った義務教育学校「安平町立早来学園」(北海道安平町)が、2023年4月に開校しました。学校を、地域住民にも開かれた場所にし、地域と学校が一体となる空間を、ICTを活用して実現しました。
校内の「家庭科室」「美術室」「音楽室」などの教室は、授業で利用していない時間帯、地域住民がWebサイトから自由に予約して利用することができ、「キッチン」「アトリエ」「スタジオ」として、地域のコミュニティセンターの機能を果たします。
これらのシェアできる教室は、児童・生徒、地域住民のどちらからも教室内の様子が見える空間設計になっているほか、校内や役場など人の集まる場所に設置されたサイネージには、教室の予約内容が表示されるため、お互いの活動を知ることができます。
一方で、セキュリティラインの確保は重要な課題として浮上してきますが、児童・生徒用と住民用の入口を分ける空間設計と、ICT制御のスマートロックで教室の扉を管理することで解決しています。
安平町民と児童・生徒が考えた「みんなの学校」「自分が世界と出会う場所」をコンセプトに、児童・生徒と地域住民の距離が近づき、安全に自分と違う考え方に触れ合い、共に創り、学ぶ「共創」のきっかけが生まれる空間を実現しました。
*1 ICT空間設計とは
デジタル・ICT(情報通信技術)を活用することで、空間の役割を大きく変えることができます。既にある空間に対してデジタル・ICTをどう当てはめるのかではなく、デジタル・ICTを使うことを前提とした空間設計を行うことで、より効果的な空間を実現できると考えています。
背景
・「共創」とは
現状ある多くの仕事はAIや機械によって代行されていくと考えられています。
今の子どもたちは、30年後、想像もつかない仕事に就いていることでしょう。
これからの社会では、人間にしかできないこと、つまり共同的な創造性が最も大事になってきます。共創の体験こそが、今、人々にとって非常に大事なのではないかと考えています。
・「共創」のきっかけを作る空間が重要
安平町は北海道の南西部に位置する人口約7,300人*2(2023年4月1日時点)の町で、人口密度が1k㎡当たり約40人と北海道平均の約68人から大きく下回っており、地域で何か活動する際に人と関わる機会の少ない環境です。*3
また、令和2年5月1日時点、町内の小学校の児童数は332人、中学校の生徒数は166人で、人口減少とともに児童生徒数の減少も続いています。*4
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震の震災で早来中学校の校舎が利用できなくなったのを機に新たに校舎が必要となりましたが、校舎を再建するだけではこれまでと状況は変わらないため、4つの小学校・中学校と公民館図書館を1つの建物に統合し、安平町の児童・生徒だけでなく、地域住民間でコミュニケーションが生まれ、「共創」のきっかけとなる場所として機能する学校を目指しました。
*2 安平町についてより
*3 安平町 新町まちづくり計画 新町の概況より
*4 町内小中学校の教育環境より
・ソリューション
安平町は今まで、「学校」と「地域のコミュニティセンター」は建物ごとに分かれていましたが、早来学園ではICTを使い、ひとつの空間に「学校」と「地域のコミュニティセンターの機能を共存させました。
家庭科室・美術室・音楽室・体育館などの教室を、地域住民がWebサイトから予約して自由に利用することができます。物理的には同じ空間であっても、児童・生徒が授業で利用する「家庭科室」「美術室」「音楽室」は、地域住民が利用する「キッチン」「アトリエ」「スタジオ」になります。一方でセキュリティラインの確保は重要な課題として浮上してきますが、児童・生徒、地域住民の入口を分ける空間設計と、ICT制御のスマートロックを活用することで解決しています。
学校の中で安全に地域の活動を行えるようになることで、学校が地域住民が集まる場所に変わります。
効果
・コンパクトな運営が可能に
1つの建物に「学校」と「地域のコミュニティーセンター」の2つの機能を持たせることで、建物や運営などを1箇所にまとめたコンパクトな運営ができます。
実際、早来学園では、4つの小学校・中学校、公民館図書室が1つの建物に統合しました。
・学校と地域住民の活発なコミュニケーションが生まれます
従来の学校は、主に先生と児童・生徒(とその保護者)のための建物でしたが、地域のコミュニティセンターと一体化することで地域住民にも開かれた空間となります。この空間を通じて、お互いが顔見知りになり、地域住民が児童・生徒に何かを教えたり、児童・生徒が地域住民を手伝ったりと、今まで関わり合いの少なかった学校と地域住民のコミュニケーションを創出します。
特徴
・予約システム
シェアできる教室(美術室・家庭科室・音楽室・大アリーナ(体育館)・工作室などの教室)は、地域住民がWebサイトから日時を選択して予約することができます。学校が授業で利用する日時は予約システムに自動で連携され、その時間に地域住民が予約できないように制御されています。家や職場など場所を問わずいつでもパソコンやスマートフォンから教室の空き状況を確認して予約可能なため、気軽に学校を利用できます。
・児童・生徒と地域住民の入れる場所を安全に区分け
シェアできる教室の扉に設置されているスマートロックは、予約システムと連動しています。児童・生徒が授業で教室を利用している時間帯は、地域住民側の扉が施錠されて教室に入ることができません。同様に、地域住民が予約して利用している時間帯は児童・生徒は教室に入ることができません。利用状況に合わせて扉をICT制御することでセキュリティを担保しています。
・シェアできる教室の利用状況をタブレットやサイネージから知る
シェアできる教室の扉横にタブレットを設置し、いつ・どのような内容で教室が利用されるのかを、児童・生徒、地域住民が知ることができます。
学校内や役場などの人が集まる場所に設置されたサイネージには、教室の活動情報が表示されるため、学校に集まるきっかけを作ります。
・児童・生徒用と地域住民用の2つの入口
建物の入口は、児童・生徒用と地域住民用を別々に設置することで、児童・生徒のセキュリティを担保しました。また、地域住民の入口は図書館(児童・生徒から見た「図書室」)の入口でもあるため、地域住民は気兼ねなく利用することができます。
・シェアできる教室を学校の中心に配置し、中の様子が見える
シェアできる教室のうち、家庭科室・美術室を学校の中央に配置し、教室の入口を2つ用意することで、学校、地域のどちらの空間からも簡単に教室にアクセスができるようにしました。
教室には大きな窓があり、教室の中で行われている活動は、学校、地域のどちらからも見え、教室を使う児童・生徒と地域住民の距離が近づきます。
その他の教室(体育館・音楽室・図書室)も同様に、外から中の様子が見える空間設計のため、活動の様子を知ることができます。
校章デザイン:鎌田 順也(KD)
インテリアデザイン・サイン計画 鎌田 順也(KD)
ネーミング:清松 俊也(キャッチャーゴロ)
- クライアント
- 北海道安平町
- リリース
- 2023.04